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韓国

2012釜山/光州6 市民が収容されていた営倉と法廷を移築した5.18自由公園②、営倉編

 
 次に野外で営倉を見学する。ここにある営倉や軍事法廷は、もともと隣接する団地の敷地にあった。518自由公園からもよく見える「406」と書かれた団地の隣にあったものを、100m弱の距離であるここまで移築し、光州事件当時の様子を再現している。

入口を入ってまず目に入るのが、トラックでここに運ばれた市民の人形だ。解説によると、光州事件の際には民主化運動家250名を含む3000人の市民が軍によって拘束、監禁されたらしい。

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 韓国では光州事件の前年である1979年10月に朴正煕が暗殺され、12月には当時陸軍少尉だった全斗煥が粛軍クーデターで実権を把握していた頃だ。更には、朴正煕の暗殺は「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードの中学生運動や労働運動が全国に広まっていったことは、全斗煥の歓迎する状況ではなかったのだろう。光州事件が勃発する3日前の5月15日にはソウルで35万人規模のデモ(5.15ソウル駅デモ)が起き、5月17日には5.17非常戒厳令拡大措置がな……


 

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次に野外で営倉を見学する。ここにある営倉や軍事法廷は、もともと隣接する団地の敷地にあった。518自由公園からもよく見える「406」と書かれた団地の隣にあったものを、100m弱の距離であるここまで移築し、光州事件当時の様子を再現している。

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入口を入ってまず目に入るのが、トラックでここに運ばれた市民の人形だ。解説によると、光州事件の際には民主化運動家250名を含む3000人の市民が軍によって拘束、監禁されたらしい。

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 韓国では光州事件の前年である1979年10月に朴正煕が暗殺され、12月には当時陸軍少尉だった全斗煥が粛軍クーデターで実権を把握していた頃だ。更には、朴正煕の暗殺は「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードの中学生運動や労働運動が全国に広まっていったことは、全斗煥の歓迎する状況ではなかったのだろう。光州事件が勃発する3日前の5月15日にはソウルで35万人規模のデモ(5.15ソウル駅デモ)が起き、5月17日には5.17非常戒厳令拡大措置がなされた。これは5.17クーデターとも呼ばれ、事実上の軍政復帰だった。この時期韓国には民主化勢力と軍政復帰勢力が各地で衝突しかけていたのだ。

大統領を目指す全斗煥にとって、金大中の出身地である全羅南道での市民蜂起は特に見過ごすことができなかったのかもしれない。金大中は光州で人気があったし、1971年の大統領選挙では朴正煕に97万票差にまで迫るという実績を持つ、かなり危険な存在だった。更に戒厳令拡大の不当性を主張しデモを行ったのは光州だけだった。

実際のところ、光州でも5月18日までのデモは警察でも十分に対応できる程度の集会だったらしい。しかしこの日の午後1時に光州に投入された第7空輸師団はデモに参加していなかった男女も含め警棒で殴りつけるなどかなり強圧的にデモ隊を排除し、少しも反抗的な態度を見せる者は殴り倒してから引きずってトラックに投げ入れた。これが上の写真のトラックだ。因みにこの日の午後。光州市民はデモ隊によって、金大中の逮捕と全斗煥のクーデター(5.17非常戒厳令拡大措置)を知った。

敷地を左回りに行くと、まず憲兵隊のバラックが見える。

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どうして憲兵隊なのかというと、市民を監禁したこの施設が表だっては軍の営倉だったからだ。だから管理するのも軍の憲兵隊になる。本来営倉とは軍による下士官に対する懲罰房であって一般市民が入ることはない。しかし光州事件の時には、市民が軍によって拘束され、営倉に拘禁された。その営倉がこれだ。

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監視員の人形が立つ入口ゲートをくぐる。

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まずは居室を見学する。市民が拘禁された居室は建物の中に扇状に並び、扇の中央に監視所があるというシステムだ。建物も半円形となっている。

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これは血気盛んな若者が軍に抗議しているのかと思ったら、そうではなく拷問の様子だった。

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518自由公園の展示を見る限り、収容者に対する拷問は、収容生活でも取り調べでも日常的に行われていたようだ。

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野外展示を見終えて受付の建物で会釈をすると、中にいた男性に呼び止められた。コーヒーを指さして手招きをしている。韓国ではたまにあることなので素直に中に入っていくと、彼は日本語を話すボランティアだった。今日この時点で、518自由公園の見学者は私一人。まぁ、目立ったのかもしれない。

コーヒーをいただきながら「次はどこに行きますか?」と聞かれたので、505保安部隊の廃墟を見に行こうと思います」と答えると、ボランティアさんはちょっと顔色を変えた。

「あそこはもう火事で焼けてしまって…」
「若い人たちが、夜、勇気を見せるのに入るような場所…」
「中は入れないと思います」

なんとか私を行かせまいとしていることを強く感じる。しかも好意からだ。505保安部隊は光州事件で「ここに送られるのが最も恐れられた」「最も残忍な場所」であり、ボランティアさんはそのことを知っている。

しかし行かないわけにはいかない。国立518民主墓地や518自由公園は、光州事件の記録を見せるために作られた、あるいは管理された施設だけれど、505保安部隊は管理も公開もされていない歴史そのものを見ることができる場所だ。私はこの3カ所を、光州事件の記録を知る最も興味深い場所として、リストアップしておいたのだ。

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最後までなんとか私を止めようとするボランティアさんに「じゃぁ、(5.18INFOセンターのある)YMCAに行ってみます」と遂には嘘までついて立ち去ろうとしたら、「地下鉄の駅まで送りますよ、ちょっと分かりにくいですから」と、小雪の中彼は私を、金大中コンベンションセンター駅の改札まで見送ってくれた。本当にいい人なのだ。もしかしたら、505保安部隊には、彼の日本語では表現できないような悪い噂があるのかもしれない。「若い人が、夜、勇気を見せるのに入る場所」は、どう考えても「肝試しの場所」だし、肝試しの場所になるからには、それなりの噂や背景もあるはずだし。

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