2015恒例香港参り5 香港のホームレスシェルター、湾仔露宿者之家
香港の住宅環境を世界最悪と言う人もいる。
何をもって「世界最悪」と判断するかは議論の分かれるところだが、少なくとも低所得者にとって住環境の良い街ではないことは確かだ。私は将来アパートを借りて3ヶ月程度の滞在間隔で旅行をしようと旅先の家賃もチェックしているのだが、香港の家賃は切ない程高い。今年見た範囲では「そこそこまともな安アパートで、掘り出して月HK$3500(約55000円)が下限」という印象を受けた。最低賃金がHK$32.5(約510円)のこの街では決して安くはなく、知り合いの香港人は「家賃が世帯収入の半分を持って行くのは普通」と言う。そんな香港・湾仔の街中でこんな宿泊施設を見つけた。
「香港露宿救済会・湾仔露宿者之家」
「湾仔民間生活伝承館」改め「香港故事館」からそう遠くない場所にあるこの施設は、1998年11月オープンした。1998年と聞いて「なるほど、中国返還後のパフォーマンスか」と考えた人は私と同じだ勘ぐりすぎだ。調べて見たところ、香港露宿救済会は1933年に設立した団体で、ここの他深水埗と油麻地に避難宿泊施設を持っている。
玄関脇の階段を登ると窓から中の様子が少し見える。2段ベッドがたくさん置いてある大部屋で、エアコンこそなさそうだが、ラッキー辺りより小綺麗にも見える。
トイレとシャワーは多分1階の公衆トイレを使うのだと思う。こちらは入ることも使うこともできる。
私が生まれて初めて行った外国は**年前の香港で、その時やはり生まれて初めて「シャワー付きの公衆トイレ」を見て驚いた記憶がある。そりゃトイレは出先で使いたくなることもあるから公衆でいいけれど、シャワーはないだろ、と思ったのだ。
しかし、こういうシャワーがなければ体を洗えない人も世の中にいる、のだな。高校時代にヤマで手配師から仕事をもらうことを覚え、今では年に1度は西成のドヤ街に行くことが習慣になった私としては「無料の公衆シャワー、日本にもあればいいのに」と思う。1度社会からドロップアウトした人がもう一度スタートラインに立つには、清潔さはとても重要だ。
「この種の施設のお世話にはならないけれど十分に貧困」という層も香港には少なくなく、そういう人たちの賃貸「住宅」として大部屋にある金網で囲まれた2段ベッドで暮らしている。籠民と呼ばれる人たちだ。
「人間が金網(cage)の中に住んでいる」と言われることが多い籠民だが、別に金網で閉じ込められているわけではなく、むしろ自分の身や財産を守るための金網だ。とはいえ、人の住処としてかなり厳しいのも確かだな。
ちなみにこの籠民の生活を実話に基づいて描いた「籠民」という映画もあり、この映画は1992年に香港電影金像奨で最優秀作品賞など主要4部門を制した。
正直この籠に月HK$1500もすることはなかなか信じられない。個人的には月HK$3500払って電気もお湯もシャワーもある安アパートに住みたいと思うのだが、差額のHK$2000がどうしても支払えない人がいるのも香港の現実なんだろうな。