2016春秋航空日本で行く佐賀(周辺)24時間①、2015年に公開が始まっていた三池炭鉱/三川坑に急ぐ
2017/08/09
バニラで飛んだ函館24時間の旅行記が意外と好評だったので、もう一つLCCによる24時間モノの旅行記を書いてみる。春秋航空日本の佐賀便だ。
実は春秋航空日本の成田/佐賀便は2017年の3月から1日2往復の運航となっているが、2016年の時点では1日1往復であり、1泊の日程だと函館同様24時間の滞在だったのだ。しかし佐賀も函館同様、24時間でもいろいろな物を見ることができるしそれはとても楽しい。今回はこの佐賀(周辺)24時間の旅行記を書いてみる。
昔の佐賀空港と言えば、1県1空港政策のために仕方なく、という感じで全日空が飛んでい地味な空港だったのだが、2013年のT-Wayソウル便就航あたりから空気が変り、春秋航空の成田便・上海便就航で、中国人旅行客の地味なハブ空港にもなってきた。「福岡空港から約70kmという中途半端な場所にある県営空港がLCCのおかげで盛り上がってきた」、という感じだな。実際私だって、春秋が就航して初めて佐賀空港を利用し、それからは年1回のペースで佐賀に行っている。
今も1便時代も、IJ601便は11:40に成田を出る。
そして13:55に佐賀空港に着くのだが、佐賀県は佐賀空港利用者に激安のレンタカーを用意してくれる。ルールは年によって変わるけれど、今も24時間まで1台1000円(搭乗者2名以上の場合、1名だと2000円)で借りられることは変わっていない。佐賀(周辺)24時間遊びにうってつけのキャンペーンだ。
このレンタカーを使って24時間で佐賀(周辺)をどう回るかが、この遊びのキモなのだ。
炭坑マニアの私は、この24時間を、三池炭坑見学に利用することが多かった。かつて見学可能な三池炭坑跡は、最大規模の万田坑、そして世界遺産指定の前後から公開日と時間が大幅に便利になった宮原坑の2カ所だけだったのだが、2015年からは海に近い三川坑も土日祝に限って公開されるようになっていた。今回は佐賀空港から直接三川坑に1000円のレンタカーを走らせる。幸運なことに、三川坑跡は有明海沿岸道路(無料!)の南の終点からすぐで、とてもアクセスが良い。
三池炭坑・三川坑は、万田坑や宮原坑に比べ、現存する大型施設は多くはない。斜坑だったため巻上機の高い櫓もない。しかしここは、昭和天皇が入坑したり、労働争議があったり、458名の死者と839名の一酸化炭層中毒者を出した三井三池三川炭鉱炭じん爆発が起きたりと、三池炭坑の中でもいろいろと物語のある坑道だ。私はまだここを見たことがなかった。
1、三井三池炭坑・三川坑を見学する
三池炭坑三川坑は、旧三井港倶楽部のすぐ裏にある。
三井港倶楽部は、1907年清水建設3代目社長清水満之助により設計起工された西洋建築で、経済産業省の近代化産業遺産にも認定されている。三井港の迎賓館的な位置づけで建てられたここは、今でも結婚式場やレストランとして使われている。私が行ったときにも、結婚式かそのパーティーが行われていた。そして、その優雅な敷地の中にも、「三池坑公開中」の立て看板が見える。
サインに従って旧三井倶楽部の裏側に出ると、ちょっとしたブースがあり、ここにご挨拶をするとボランティアさんが三川坑の中を案内して下さる仕組みだ。
三川坑には第1斜坑と第2斜坑の二つの坑口があった。
そして入坑は、服装と持ち物のチェックを受けて斜坑を降りるトロッコに乗り込む。検査係が特に目を光らせたのがタバコだったことは、どこの坑道でも同じだ。
斜坑の上にはトロッコなどを整備するための施設がある。
ここには朽ち果てたトロッコが残されている。石炭産業科学館などに置かれた保存状態の良いトロッコも魅力的だが、かつて活躍した場所で朽ちていく赤く錆びたトロッコからは時の流れを感じる。こういうものを見せてくれるのは、とてもうれしい。
三川坑は斜坑なので、立坑のような高い櫓はないけれど、巻き上げ機は残されている。規模的に万田坑や宮原坑のものには及ばないものの、炭坑見学では外せないポイントだ。
この木造の美しい建物は「繰込場」と言う。入坑前に坑員立ちが作業の確認などと行ったり、切羽などの指示を受けた場所だ。今なら木造なんて贅沢はできないな。
そしてもちろんこれも。炭坑には欠かせない「山の神」だ。残念ながら大きな事故は起きてしまったけれど、危険な現場では信仰は大きな役割を持つ。
ボランティアさんは様々な資料を持っていて、質問などにも答えてくれる。私を案内してくれた方はかつてここで働いていた方こともあり、そのお話は極めて興味深かった。特に爆発事故の時の様子や、爆風と破壊された(あるいはされなかった)建物の位置関係などは、とても興味深い。爆風は斜坑出口から直線方向に吹き、少しずれた場所にあった施設はこうやって現存できた、とのこと。なるほど、だ。
見学は無料、ボランティアさんの案内も無料だが、入り口ブース(というかプレハブ)には募金箱がある。僅かばかりの募金をしたところ、ボランティアさんは石炭をひとかけら下さった。最近のこどもは、これを見てもなんだか分からないことが多いのだという。そういえば、普通に生活していて石炭なんかみない時代になって、ずいぶん経つ。
ブースには炭坑や地域の土産物も売っている。DVDなどはここでしか手に入らないかもしれない。
宮原坑や万田坑のように派手ではないけれど、興味深く公開されてまだそんなに立たない三川坑跡は、土日祝の9:30から17:00までしか見学できない。しかも最終入場は16:30までだ。宮原坑は毎日公開、万田坑は月曜以外公開なので、三池炭坑は日程と時間をうまく調整して見学したい。