2012黒海西側を行く7 チェルノブイリ1日ツアー①
チェルノブイリ原子力発電所の見学が一般人に許可されたのは2011年だった。
ウクライナ政府は、「30km圏内なら5日程度、10km圏内でも1日以内ならば健康に影響はない」としてチェルノブイリの一般開放を決定した。正確な時期はいつ頃だったのだろうと今調べて見たら、事故後25年経過した2011年の2月とのことで、福島第一原子力発電所の事故直前だったことに驚いた。もちろん私がこのツアーの存在を知ったのは福島の事故以降のことなのだが、もし福島の事故がなくともチェルノブイリには行っていただろうと思う。ここは間違いなく「人類の犯した悲惨な出来事」の現場であり負の世界遺産的な意味合いを持つ重要な場所だ。
「一般に開放」と言っても、自由に出来る出来るわけではない。事前にツアーに申し込み、政府の係員が同行する。しかも日帰りでも約$150と結構な金額だ。しかしウクライナを訪問してチェルノブイリを見ないのは、広島にいって原爆ドームを見ないようなものだ。宿はゲストハウスでも、食事がスーパーのお総菜でも、必要な出費を削ることはできない。私は出国前に最も対応が良かった代理店に氏名やパスポート番号など必要な情報を送りPaypalで$49の予約金を支払い、当日の集合場所であるDnipro Hotelに向かった。
この日の参加者は、私以外はアメリカ人1名、フランス人2名の合計4名。ホテルにやってきた担当者に残金を現地通貨で支払いツアーが始まる。事前に聞いていた話では「バスに乗せられて現地到着までチェルノブイリ事故に関するビデオを見る」はずだったのだが、自家用にしか見えない普通のワゴン車に乗せられる。キエフからベラルーシの国境に近いチェルノブイリまでは約150km、車で約2時間の距離だ。
ちなみに私の使ってきたガイガーカウンターによると、キエフ郊外の放射線量は当時の千葉県柏市の平均的な値よりも低い。
最初の見学地となるのは炉心から30kmゾーンのチェックポイントだ。
ここで私たちはガイドとなる政府の係員と合流し、ツアー内容と注意事項が書かれたレターと使い捨てマスクが配られる。いやいや、私日本からもう少ししっかりした作りのマスクを持参しましたから。中国製の怪しいやつだけれど、自前のガイガーカウンターも持参していますから。
ゲート近くには事故の犠牲者を悼むモニュメントがある。チェルノブイリ原発事故による死者数は、旧ソ連の公式発表では「運転員・消防士合わせて33名」ということになっている。ちなみに原子力の平和利用を推進する立場のIAEAでは約4000名というのが公式見解だ。
ここから先が制限エリアの30kmゾーンとなる。"DANGER"と書かれたゲートが上がり、我々は旧ソ連やウクライナ政府が「放射性物質による汚染のため、入域を制限する必要がある」と判断したエリアに入る。
当時の柏の一部より、ずっと低い放射線量だったけど。