2015マニラ秋社会科見学6 ナボタス集合墓地、墓にもいろいろある件
2016/08/22
ナボタスの公共集合墓地にある墓は、基本的には積み上げられたコンクリート製の棺だ。
「棺」という言い方は誤解を招くかもしれない。このコンクリートブロックはあくまで棺を納めるスペースであって、死者の遺体はこの穴の中で朽ちていく。最初の契約期間は5年なのだが、契約を更新しない人も少なくなく、その場合遺体は「処分」される。高温多湿のフィリピンではコンクリートの穴の中でも5年あれば遺体はきれいな骨になるのだろうな。
ただ同じナボタスの公共墓地でも、墓の大きさや形態にはいろいろある。例えば、この墓はスペースもゆったりしているし上に墓を重ねられていない。
屋根と壁のあるこんな墓もある。
こちらは屋根も壁もないし積み重ねられてはいるが、2階から3階建てで空間的にも比較的ゆったりして見える。
これらの比較的にゆったりした墓は教会側の入り口近くに多く、ゲートから墓地の奥、海側に行くと墓の密度が高くなり高層化していく。スラムの住民は死んでもスラムで朽ちていく。魂は天国に行くのなら遺体がどこにあっても意味はないのだけれど、それでもやっぱり少しは切ない。もし私が墓を選べるのなら、ここに葬られるよりは森の中に埋め欲しいと思う。
ただ墓は残された人のためのものでもある。5年契約のコンクリートの穴の入り口には、残された人の想いが見え隠れすることもあるし、
あまりそうではないケースもある。ただの蓋とはいえ、その様子も様々だ。中には親族のいない人もいるだろうし、事情も様々なのだろう。もしかしたらプレートは制作中なのかもしれない。
ナボタスの公共集合墓地は「積み上げられた」と書いたが、油断しているとこんな墓もある。
最初は蓋のプレートが落下したのかと思ったのだが、よく見るとどうも地面を掘って埋葬したらしいことが分かる。こちらの方が一般的な墓の形態なのだけれど、ここでは少数派であるため目立たず、つい気がつかずに踏んでしまう。ごめんね、悪意はないんだよ。
死者の遺体がコンクリートブロックの中で朽ちていく、なんともいえない光景のナボタス集合墓地だが、この場所を更に特殊に思わせる事情がある。それは墓地に住む人たちの存在だ。