2016大邱7 悲惨な歴史を背負う地下鉄1号線に乗り、大邱近代歴史館に行った件
チャジャン麺でお腹を満たし、地下鉄で大邱の繁華街に出る。
大邱の地下鉄と言えば、2003年の放火事件があまりにも有名だ。192名の犠牲者を出したこの悲惨な事件は、東大邱駅を大邱駅、そして繁華街を結ぶ1号線の中央路駅で起きた。そして次の目的地である大邱近代歴史館は、この中央路駅から約100mの距離にある。
大邱の地下鉄放火事件は、その犠牲者の多さと悲惨さから事件を反省するための大邱市民安全テーマパーク、という施設も作られた。悲惨な事件を思うと「テーマパーク」という名前に違和感がないでもないが、これは日本人ならではの感覚なのかもしれない。ここには、被災した2系統の車両が展示されている。
大邱の地下鉄1号線での大規模災害はこれだけではない。1995年、近くのデパート新築工事の時にガス管が破られ、そのガスが地下鉄工事現場に充満して爆発し、近くの中学校の生徒を含む102人が犠牲になった大邱上仁洞ガス爆発事故という事件もあったのだ。8年間に100名を超える死者を出す大事故が2度あるなど、日本だとお祓いレベルの災いなのだけれど、韓国にお祓いはあるのかな?
ともかく、そんな過去を背負う1号線を、大邱の繁華街である中央路駅をめざし、その、皮肉な名前だけれど、「安心方面」に向かう。
…そうだよね、安心しなきゃ。
でも、放火事件の時に活用されず犠牲者を増やしたと言われる、非常用コックの位置だけは確認させてもらうぞ。
中央路駅から徒歩2分、かつて慶尚北道の監営(役所)があった慶尚監営公園の筋向かいに、大邱近代歴史館はある。
ここはかつて朝鮮殖産銀行の大邱支店として1932年に建てられたもので、日本統治時代の建物だ。建物の由来からも「近代歴史」というテーマからも、日本統治時代についての展示もある。
それほど規模の大きな博物館ではないのだけれど、ちょっとした体験として「バスに乗って日本統治時代の大邱市街を見る」というアトラクションがある。
これは韓国では珍しいことだと思う。未だに反日感情が深く、政権もうまくいかなくなるととりあえず日本を批判して延命するそんな国で、日本統治時代の繁華街を特に批判もなく見せるというのは、結構画期的なことではないだろうか。
2015年にソウルの歴史博物館で日本統治時代の展示を見たときも驚いたのだけれど、最近の韓国はエクスキューズなしに博物館が日本統治時代についての展示を行える時代になってきているのかもしれない。日本統治時代の展示がほんの少し、しかも、超悪役国日本、の解説付だったふた昔前を思うと、かなりの変化だ。もちろん同時に慰安婦像なんたらも進行中なわけで、一筋縄では行かないけれど。
ありがたいことにここは入場無料の上、日本語のオーディオガイドもある。
ふむふむ、ここは銀行時代金庫室だったのだな。
展示解説は、韓国語と英語が主で、日本語の解説はほとんどない。日本人はオーディオガイドをどうぞ、ということだな。
歴史観そのものの規模は小さい。2回にもちょっとした展示はあるけれど、特別展か何かなのか、1階の展示との関連性はよく分からなかった。
とまぁいろいろ書いたけれど、大邱の繁華街どまんなかにある日本統治時代の建物に入れる、とうだけでも、ここに来るのは悪くない。なによりここは無料で繁華街の真ん中だ。近くを通る機会があるのなら、素通りするのはもったいないと思う。
最寄り駅の地下鉄中央路駅では、ほんの一瞬でもここで悲惨な事件のあったことを思いだし、犠牲者の冥福を祈りたい。私はずっと「ここが現場かぁ」と思い続けた、というより、考えざるを得なかった。当時のニュースの映像が頭に残っていたせいもあるかな。