2017ウズベキスタン8 街の安食堂と巨大な「中央アジアプロフセンター」で油飯プロフを理解しようと努力した件
2018/02/26
スムの札束とSIMを手に入れた私は、ミラバッドバザールの裏(?)でこんな店を見つけた。
プロフ (Palov)。中央アジアでよく見かける炒めた米をスープと油で炊き込んだ料理で、発祥の地とされるトルコではピラウ、イランやキルギス、中国の新疆あたりだとポロ、と呼ばれる。フランス語やフランス経由で入ってきた日本語で言うところの「ピラフ」だ。この米料理は必ずしも安くはなくそれなりのお値段なのだが、私は一度もおいしいポロを食べたことがない。
しかしこの店は店内が安食堂になっていてそれなりにお客が続く。今まで私が経験した味はともかく、この鍋の光景は食欲を刺激する。料理人が私に何か言う。やっぱりプロフを注文した地元の人によると、どうやら「出来たてだよ」と言っているらしい。
中央アジアのポロやプロフはただ事じゃない量の油を使う。いつ見ても鍋の底には油が大量に残っていて、時間が経ったものはめちゃくちゃ油臭くて不味い。しかし、もしかして出来たてをたべれば印象は変わるのだろうか。このプロフは後ろの店内で食べることができるようだし、店内にはカフェやビール売り場も見える。ウズベキスタン到着日であったこともあり、私は1人前頼んでみた。
おお!、やっぱりそんなにおいしくはない。
なんなんだろう、私は米を主食として育ってきたから、かえって米料理の受容の幅が狭いのだろうか。インディカ種も大好きで、タイ米のさらさらしたお粥や薄いカレーをかけたミールスあたりまでは「大好物」と言えるのだけれど、スリランカの焼き飯やポロ/プロフの類は、正直「大好き」ではない。食べられないわけでないけれど、今回も「大好き」にはなれなかった。
ただ、この店はビールが最安2700スムからなのは大当たりだった。8000スム≒1$と考えるとおよそ35円。首都の安食堂という最強の環境ではあったけれど、私はここ以外で3000スムを割る価格のビールを見かけることはなかった。ここで3000以下の安値を覚えた私はこの後結構安ビールを求めて彷徨うことになったのだが、全てが無駄足だった。安食堂やビール工場直営店のドラフトだって3500-4000スム、店によっては8000スムくらいは普通なのだ。
料理も安い。旧ソ連や旧東欧でたまに見かけるセルフサービス式のカフェ、なのだが、値段を聞くと5000スム程度でも何かが食べらるらしい。覚えておこう。ミルリ・タオムラル(Milliy Taomlar)と言うのだな。
安いけれど中国に比べれば比較にならないおいしいビールと、プロフでお腹はいっぱいになったけれど、私のプロフに対する疑念はますます深まった。
世界には、私が好きになれるプロフはあるのだろうか?
そんな私を試してくれる試練の場所がタシケントにあることは聞いていた。旧ソ連・ウズベキスタンの首都であるここには、「中央アジアプロフセンター」というものすごい名前の巨大な店がある。好き嫌いは別として、ミルリ・タオラロムのプロフがおいしいのかまずいのかその判断すらできない私は、そろそろ結着をつけたいと、そのプロフを試してみることにした。プロフセンターの最寄り駅はHabib Abdullayev、Oybekから地下鉄に乗れば20分程度で着くようだ。
地下鉄駅からタシケントタワー方面に歩くこと8分、噂の「中央アジアプロフセンター」に到着する。しかし、「中央アジア」とは大きく出たものだな。
話には聞いていたけれど、店内に入って、改めてその規模の大きさに驚く。なんの会場だよ、ここ。
お値段は、えっと、
何も分からない。
スタッフは外国人に慣れているらしく、ウズベキスタンの言葉を理解しないと見るや英語のできるスタッフを呼んでくれる。どうやらプロフにもシンプルなものから肉などを増量したもの、あとはサラダや飲み物などがあるらしい。周辺を見回しても食べられているのはだいたいそんなもので、メニューにある28アイテムが何なのか気になるところではあるが、とりあえず「普通の」プロフとお茶だけを注文する。
「普通の」プロフには鶏と鶉のゆで卵にソーセージ、羊肉、人参やタマネギ、そして大量の油が入っている。パンは勝手に出てきた。こう言ってはなんだが、さっきの店のプロフとベースの味に違いを感じることができない。きっと私は一生、プロフのおいしさを理解できないのだろう。
ただ間違いのないことは、この巨大な店にはたくさんの客が入っており、みなさん満足げに食べていること、お値段はさっきの安食堂とあまり変わらない10000スム(≒130円)少しでいただけたこと、店員も周りの客も親切だったこと、だ。プロフの味は街で食べても変わらなくても、この店を体験することは中々興味深い楽しい。
食べ終わり店の写真を撮っていると、誰かが「こっちにおいで」と呼ぶ。行ってみるとそこはプロフの調理場だった。ここのプロフは隣接する自転車置き場のような場所で作られており、注文を受けたスタッフが店内に運ぶようだ。
それにしても大きな釜だ。
大鍋の中の油の量もただ事ではない。全てのプラフはこの鍋から提供され、注文に応じてオプションを乗せる。
なんなんだろう、ポロやプロフ愛好家のみなさんと、東アジア米醤油味噌民族の私とは、多分油に対する考え方が違うような気がする。米がこんなに油まみれになった時点で、私には「なんらかの失敗」に思えてしまうのだが、プロフは油にまみれて完成する。できれば上の油の少ない部分をと思っても、スタッフは容赦なく米と油を混ぜ提供する。
中央アジアのプロフ、ポロは油飯だ。米と油はもともと大変に相性が良く、腹持ちも良い。こんなプロフを2時間少しの間に2食食べた私は、大いに称えられるべきだと思う。
あー、沢庵でお茶漬け食べたい。