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中国

2017重慶6 中心部の朝天門埠頭から解放碑広場、そして隣接する「スラム」の取り壊しを眺めた件

2018/06/29

重慶は喜陵江と長江が合流する土地だ。ここは三峡下りの船の起点でもあり、埠頭にはクルーズ船が多く停泊している。

私にとって三峡と言えば、140万人が強制移住(2020年までには240万人)となった巨大プロジェクト三峡ダムであり、山崎豊子の「大地の子」で中国残留孤児の陸一心と実父の松本勝男が親子水入らずの旅をしたコースだ。朝天門埠頭には、なかなか立派なクルーズ船も停泊している。

5日間の滞在で3~4日間が主流の三峡クルーズに参加するのは難しいけれど、ここからは長江を1~2時間行くだけの遊覧船も結構ある。多くの遊覧船はチケットは定価では食事もなしで「1人250元」程度のようなのだかが、もちろんこんな値段で船が満員になる訳もなく、埠頭ではチラシをもったおばさんが10mおきにいて、ディスカウントチケットの宣伝をしている。

電光掲示板に値段を出している代理店もあり、ナイトクルーズだけなら当日5-60元で乗ることが出来るようだが、もちろん私にはそんな大金を支払う意思はない。そんなお金があったらバスに30回乗れるじゃないか!

埠頭から河の合流地点にある朝天門広場まで歩いてみる。一応観光名所だからな。

うーん、そうですねぇ。再開発中であることを差し引いても、あまり面白くはない。2つの河の色が違うのが面白いなんて話も聞くけれど、私は澄んだ心を失ってしまっているので「そりゃ土壌が違えば河の色も違うわなぁ」くらいにしか思わない。大体こういう「名所」型観光地ってまず間違いなく面白くない。

私にはむしろ、かつて使われていた(多分)コンテナ積み込み用レールの急斜面の方が興味深く、「わーい、わーい」と言いながら横の階段を登る。ただの河が交わる半島先の広場より、こういう産業遺産の方に興味を持つ人間も少なくないことを、重慶の観光を推進するみなさんには知っていただきたいとも思う。ここには解説板が欲しかった。

川沿いを南下して歩くと、ちょっと橋の下にちょっと曰くありげな階段が見えた。かつての重慶城の東水門跡、とのこと。

モンゴル軍侵攻に備え重慶に城が築かれたのが13世紀。半島の地形を要塞として利用した重慶城には17の門があった。東水門は現在も残る貴重な2つの門の1つなのだが、ここにやってくる観光客はこの時間には皆無だった。まぁそんなもん、なのだなぁ。

更に2km程歩き、日も傾いてきた頃、重慶市のまさに中心部である解放碑歩行街に到着。

何この都会、どんだけおしゃれなのよ。私は身の置き場もないよ。

ちなみに私が勝手に辛気くさい年季の入った石碑を想像していた「解放碑」は、この美しくライトアップ8角形のコンクリートタワーだった。建設は第2次大戦語後の1946年、高さは「七丈七尺」(≒26m)、これは日本では「盧溝橋事件」と呼ばれる中国の「七七事変」に由来している。

かつてはこのエリアで最も高かったに違いないこの塔も、今ではブランドショップや高層ビルに囲まれてはいるけれど、それでも塔は「重慶の精神的要塞」として広場の中心に立つ。

そしてここには興味深い場所がある。一八梯だ。

うーむ、暗い。感度アップ!!!

朽ち果てた古い建物と木々が点在するこの一八梯は「老重庆市民生活的真实写照」、つまり「古い重慶の市民生活がそのまま残る街」だった。

「だった」と書いたのは、2017年、ここにはもうほとんど人が住んでおらず、18の階段も歩くことができなくなっていたからだ。ここはもう重慶の他の古い町同様、再開発の対象となっていた。

とは言っても、ほんの少しならまだ一八梯の匂いを感じることはできる。一八梯の解放碑広場側にはほんの少しだけ歩いて降りることができる部分があり、そこでは火鍋屋が営業をしていた。周辺はもう瓦礫まみれになっているし、まだ営業をしていたら奇跡、という気もする。

一八梯を「重慶の中心部に隣接したスラム」と言う人もいるけれど、ここは必ずしも「スラム」ではなかったようだ。確かに貧困層の人も少なくなかっただろうけれど、ここには「老街道周围居住着大量普通老百姓,街上散发着浓浓的市井气息」、「普通の人たちがたくさん住んでいる、豊かな雰囲気に溢れる通り」があったらしい。

ただ、この普通の暮らしがある古い街は、時代に追いつかなかった。

「再現老重慶」の横断幕のある梯上部から眺める光景は、この通りだが、

後ろを振り向くとこれだ。

急速な発展途上にある中国は、都市と農村の収入の差が大きな社会問題になっているけれど、解放広場から続く民権路とそれに接する一八梯は、まるでその象徴の様だ。

どの国であっても極端な経済的格差は大きな問題になるし、人々が未来への希望を抱けない社会は健全に発展しにくい。中国・深センの北部で暮らす三和ゴッドもそういう背景から生まれたのだと思う。以前私はどうしても三和ゴッドの街を自分の目で見たくなり、現地で結構怖い目にあった。

中国の地方で生まれ農村戸籍のまま都市で働く「民工」についてはいろいろな資料があるが、2017年11月に発表された3億人の中国農民工/食いつめものブルースは、そんな本の中でも中学生にも分かりやすく、そして一気に読ませる内容で、民工の実情を伝えてくれる名著だった。

中国は歴史の長い極めて興味深い旅行先だ。私は現地でその国の問題について云々することは旅行者のマナーではないとは考えるけれど、中国を旅行する人は、一度はこの本を読んでおいて損はないとも思う。

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