2018大邱12 東大邱から電車を使って河回村に日帰りをした件④ 安東で市場と絵画村を見てから侘しい夕食をいただく
河回村から246番のバスで安東の駅前に戻る。
途中バスターミナルで下車すれば頻繁に走る高速バスで大邱に戻れるのだけれど、往路の電車が楽しかったので出来れば帰路も電車で帰りたかったし、河回村に来るときでもなければ絶対に来ることのない安東の街も見ておきたくて、駅前に戻ってきた。とりあえず観光案内所に行き、お勧めの飲食店と見所を尋ねてみる。
「そうですねぇ。駅の北東のSeonjing Gilに絵画村がありますけれど」
安東の絵画村?聞いたことがない。詳しく尋ねてみると、駅から歩いて20分程度の場所にあるらしい。よし、そこに行ってやろうじゃないか!
(多分)小学校の横にある坂道を登ると、道沿いの壁が華やかになってきた。どうやらここが絵画村の入り口のようだ。うーん、「タルトンネ」の匂いがする。
韓国には「タルトンネ」と呼ばれる街がある。直訳では「月の街」という意味だがそれはあくまで言葉の上だけのことで、実際に「タルトンネ」は丘陵地のバラック集落を意味した。
朝鮮戦争後、家を失ったり南に流れ込んできた人たちには行き場がなく、水道もガスもない不便な丘陵地にバラックを建てて住んだ。そんなバラックが増えやがて集落となった場所を、高地にあることから「タルトンネ=月の家」と呼び、それらはソウルのみならず釜山のような大都市、中小都市にも少なからずあった。
成り立ちは決して喜ばしいものではないタルトンネだけれど、そのタルトンネの一部が「アートの街」として話題になったのは、ここ10年前後のことじゃなかったかと思う。大通りの家の壁に絵を描くのは抵抗があっても「タルトンネ」の壁になら抵抗は少ない、あるいは絵画は街の印象を向上させる、そんな意図もあったのかもしれない。実際、釜山などではタルトンネはアート村として認知され観光客を呼び込んだ。
ここ安東の絵画村も、もしかしたらその流れを受けたのかもしれない。
街には絵画のみならず彫像もある。どちらかと言うとモダンアート系だ。
釜山のタルトンネは規模も大きくカフェなんかがあったりもするが、ここ安東の絵画村にはカフェどころか雑貨店もろくにない。しかし観光案内所が紹介してくれた場所でもあるので、坂道の路地に入り込み生活エリアにお邪魔する。
途中目のあった人には「アンニョンハセヨ」とご挨拶すると、一応会釈も返してくれ、よそ者を排除するという空気はない。一応案内看板のようなものもある。
今でこそ電気もガスも水道もありそうだけれど、それでも建物は丘陵の斜面に結構強引に建てられていることが、建物の奥を見ると分かる。
これは昔はトイレとして使われてきたようで、室内にはしゃがみ式便器の痕跡がある。下水どころか水道もない場所ではトイレの問題は重大だ。現在ではきれいに清掃されていて悪臭などは全くない。貴重な社会遺産だな、これは。
安東・絵画村から町を見下ろす。
お、なんだなんだ?坂下の小学校がえらいことになってるぞ?
坂を下りて小学校を見る。
ま、まぁ、、アート、ですなぁ。坂道にはこんなのもあったし。
タルトンネには、写実主義作品よりモダンアートの方が似合う気がする。
そろそろお腹が空いてきた。ここまでの道にはあまり目立った店もなかったので、再び観光案内所で今度はお勧めレストランを訪ねてみる。
「そうですねぇ、食事ならここにもやしのスープ、あとこのカルククスの店も人気です」
安東は「チムタク」が有名だと聞いていた私は、「チムタクはどこがいいですか?」とも尋ねたのだが、「チムタクは鶏1羽を使いますから」とひとり旅の私には勧めてくれない。確かに半身ならともかく、1羽はきつい。しかももやしスープやカルククスは安上がりだ。さすが旅行者を見続けている観光案内所のおねえさん、人を見る目がある。
しかしそれでも納得のいかない私は、観光を兼ねて安東の市場を覗いてみた。ひとりの客には半羽でも作ってくれるという話も聞いていたし。
なるほど、ここは「安東ウォンドシム伝統市場」というのだな。歓迎ありがとう。
まぁ、半人前で出してくれる店もあるのだけれど、あまりお安くはない。副菜を多く出す韓国の食事システムだとこうなるのかもしれないなぁ。仕方ないので、観光案内所のおねえさんが教えてくれた店を探す。
やってない。どの店も月曜のこの時間はやっていない。実は私が結構楽しみにしていた駅前の有名塩鯖店もやっていなかった。安東は月曜日に休む店が少なくないようだ。
お腹空いたなぁ… お?
おおお?
もういい、これでいい!
韓国は外食が結構お高い国で、国際価格のワッパーだって例外じゃない。しかし国民所得の低いスリランカでも容赦ない国際価格670円のワッパーミールが、ここ韓国では7700ウォン(≒760円)。
ワッパー単品でも5700ウォンで、これはキサシクタン(技師食堂)のテンジャンチゲが6000ウォンであることを考えれば、決して高くはない。それになにより私はワッパー愛好家だ。夜にハンバーガーは寂しくないと言えば嘘になるけれど、ワッパーなら我慢できる。
わざわざ安東まで来て食べるものじゃない、というご批判もあるだろうが、これは私の晩メシだ!
ワッパーでお腹を満たし、帰路につく。
列車は安東初17:41のムグンファ号。3月のこの日は、車内から日没を眺めることになる。
途中、月と古い蒸気機関車用給水塔の美しい永川駅で19:07分発の東大邱駅行きに乗り換える。
やっぱり列車はいい。韓国を効率よく移動するにはバスが一番なのは知っているけれど、それでも列車は楽しい。東大邱から安東/河回村へは列車でいけてとても良かった。
第一バスに乗ってしまったら、安東の絵画村も市場もバーガーキングにも行けなかったじゃないか!
宿に入る前に、コンビニでビールを一缶買い込む。深夜お腹が空くかもしれないけれど、ラブウェイモーテルでは1日2個のカップ麺が無料で提供される。いざとなればこれを食べれば良い。
私は食べなかったカップ麺を旅行カバンに入れて隠しておいたので、既に4個だか6個だかのカップ麺をため込んでいた。多分今日も4本の缶入りドリンクと共に補充されているだろう。
ドリンクは機内に持ち込めないので飲んでしまうしかないけれど(実際毎日凍らせて持ち出していた)、カップ麺は日本に持ち帰ることができる。今回の韓国土産はラブウェイのカップ麺だ。みみっちいけと笑う奴は笑え。こうやって持って帰ったカップ麺は、普通にかったそれより何倍もおいしいんだぞ!