2018ドイツ5 ゲシュタポ本部跡地に作られた「トポグラフィ・オブ・テラー(テロのトポグラフィー)」で 戦争犯罪について考えさせられた件
2022/10/03
これまで、ポーランド、チェコを経由してベルリンにやってきたが、そこで見てきたのは地域の素晴らしい歴史遺産であり、そして悲惨な戦争の記録だった。
もちろん最後の大きな戦争だった第2次世界大戦の痕跡は最も生々しく、ナチスドイツが加担した物は少なくない…、いや、多い。
そんなナチスドイツの秘密警察だったゲシュタポ本部の跡地に作られたのが ”Topographie des Terrors”(トポグラフィー・オブ・テラー)、「テロのトポグラフィー」だ。
ここでは比較的長く残されたベルリンの壁を見ることができる。しかも史跡として保存された経緯があるためか、他の壁と違い絵画や楽学が皆無に近い、素の壁を見ることができる。
この壁を見るだけでもここに来る価値はあるのだけれど、忘れてはならないのが、ここがゲシュタポの本部だったということだ。
ゲシュタポ本部があったこの場所には、多くの政治犯が拷問され処刑された地下室が発見されている。
その大部分は既に破壊されてしまっているけれど、残された遺構は保存されていて、そこがどんな場所だったかが示されている。
そしてここには博物館もある。民間の観光型博物館とは違い入場無料のもので、その内容はとても濃い。
広い館内には、常設展示として ”Topography of Terror. Gestapo, SS, and Reich Security Main Office on Wilhelm- and Prinz-Albrecht-Straße”、”Berlin 1933–1945 Between Propaganda and Terror”、”Topography of Terror Site Tour. The History of the Site” というこの場所にちなむ解説展示があるのだが、これだけでもかなりの情報量になる。
重要なのはここが加害者であるナチスドイツの歴史を主眼とした博物館である、ということだ。
パネル展示がメインになるけれど、ナチスドイツに関する記録がこんなに多い場所は、多分他にない。どうしてナチスがドイツで力を持つようになったか、何を行ってきたか、などを伝えることが、この博物館の目的、なのだろうな。
戦争違反罪者であるためか個人情報にも容赦はなく、ヒムラー級の人どころか「休暇を楽しむアウシュビッツの職員たち」の写真まである。若い女性も多い職員が楽しそうに笑うその写真は、「なぜ、普通の人である彼らはこんなことができたか」、「どのような流れの中でナチスが力を持ち、人々はどう振る舞ったか」など、重い問題をつきつける。
「トポグラフィー・オブ・テラー / テロのトポグラフィー」はあのチェックポイントチャーリーから僅か400mの場所にある。
現存する素の壁を見るためにだけでも、そしてできればナチスが何をしてきたかを知るためにも、ここを訪問する意義は大きいと思う。
ただし展示解説はドイツ語と英語だけになるので、重いテーマとあわせてとても頭が疲れることは間違いないな…。