2018ジョージア21/アルメニア1 トビリシ駅前からマルシュルートカでアルメニア/エレバンに向った件
2022/10/03
アルメニアのエレバンまでは、トリビシの複数の場所からバスが出ている。
運賃は30-35ラリで所要時間は約4時間。両都市を直行する国際列車もあるのだけれど、夜行列車で所要時間が長い上運賃も高いようなので、ここはやっぱりバス、というかマルシュルートカを使うことになる。ジョージアは鉄道よりバスの方が安くて速い。
駅前からは9:00、11:00、13:00、15:00、17:00に発車するマルシュがあるとのことだったので、9時のマルシュに間に合うよう、そして想定される最悪のケースである「満員なので次のマルシュにどうぞ」を避けるため、早めにトビリシ中央駅に向った。
地下鉄のトリビシ中央駅からジョージア国鉄駅に向かう途中の駐車場の中に、噂の切符売り場があった。キャンピングトレーラーを使った売り場で、車体には”EREVAN”と書いてあり、大変に分かりやすい。
私は朝8時を少し過ぎた頃にここについたのだけれど既に先客がいて、その後本当に「満席」で9:00発の切符が買えない人も出た。バスとは言ってもそこは大型ワゴン車的なマルシュルートカ、乗ることのできる人数は限られている。早く来て良かった。これを逃したら、次のマルシュは2時間後だ。
定刻の少し前にマルシュは発車する。乗客は7-8人かそれにも満たないのだから、全員揃えばとっとと出発してしまったほうが良い。狭い車内は快適とは言えないけれど、今までのマルシュと特に違いはないし、私はこの狭さに慣れきっている。メスティアに行った時を思えば楽勝だ。
マルシュは高速や国道を順調に走り、2時間程で国境に到着した。
国境には免税店もあるけれど、のんびり買い物をしている時間はない。
ジョージアとアルメニアの国境では、ジョージア出国で特に困ることはない。オーバーステイでもしていない限り問題は発生しないし、ジョージアは日本人にはビザ無しで1年の滞在を認めているので、普通の旅行者にはオーバーステイの心配は無縁だ。ついでに書くと、ジョージアではビザなしで就労しても構わないらしい。
しかしアルメニア入国に関して、私には小さな問題があった。つい最近、アルメニアと関係の良くないアゼルバイジャンに入国していたのだ。
南コーカサス3国の関係は実に微妙だ。
アルメニアはジョージアとは国境を開いているものの、アゼルバイジャンとの間には「ナゴルノカラバフ問題」などの国境問題を抱えている上実際に軍事衝突も起きていて、国境は開かれていない。しかも、どちらの国でも相手の国の入国履歴があると、ちょっと面倒、らしいのだ。
ちょっと緊張しながら入国審査官にパスポートを提出すると、予想以上の反応が返ってきた。
「なんでアゼルバイジャンなんかに行ったんだ!」
イミグレに響くほどの大声は予想していなかった。
「いや、それは飛行機の予約とか…」。私が口を濁していると「あんな国には行かないほうがいい」と言いつつも、アルメニアの入国審査官は私のパスポートにスタンプを押してくれた。ほっと一安心である。アゼルバイジャンのスタンプがあるとアルメニア入国時詰問されることはあるけれど、入国できないことはまずないらしい。
ただ、これがアルメニアの入国記録を持ったまま陸路でアゼルバイジャンに入国しようとすると、もっと面倒なことになりかねないらしい。空路はともかく陸路では最悪入国を禁止される説、まである。アゼルバイジャンがビザ免除をする条件が「国際空港からの入国」とあるので、本来のルールを適用しているだけ、とも言えるけど。
更には、前述した「ナゴルノカラバフ問題」の舞台である、実質アルメニアの管理下にナゴルノカラバフ「国」は、アルメニアでビザを発行しており、これがまた色鮮やかで美しく、ナゴルノカラバフに行かないのにこのビザを取りに行く旅行者もいるらしい。シール状でも貰えるようなのでパスポートに貼らなければ良いだけなのかもしれないけれど。
しかし、ナゴルノカラバフビザのあるパスポートでは、アゼルバイジャンに入国することはできない。アルメニアの入国記録だけでもここよりずっと面倒になるというのだから、当然といえば当然だ。
南コーカサスを行く多くの旅行者は、アゼルバイジャン → ジョージア → アルメニア、と移動する。私のアエロフロートの航空券も、ルートは成田→バクー/エレバン→成田のオープンジョーにした。
イミグレで叱られはしたものの無事アルメニア入国を果たした私とその車は、なかなか風光明媚なアルメニアの山岳エリアを行く。もっと天気が良ければ良い景色だったんだろうな、と思わえる場所だ。
アルメニア入国後1時間程で、車はランチ休憩のために停車する。どうやらセヴァン湖からそう遠くない場所のサービスエリアのようだ。休憩時間は15分、とのことだったけれど、実際には40分以上停車で、そんなことなら両替をして何か食べておくんだった、だ。
アルメニア国境の銀行は客の数に対応できるだけの職員がおらず、私はアルメニアドラムを全く持っていない。ジョージアから持ち込んだ水とパンだけが、私のランチだ。
カフェはそれなりに混雑していて、食べきる時間が読めない。カードは使えそうだったし、食べたかったなぁ。
レストランの横には魚なども扱うマーケットがある。セヴァン湖のお土産、ということなのだろうけれど、日本人の目には今ひとつ美味しそうには見えない。淡水魚だしねぇ。
更に走ること約1時間少し、マルシュはエレバンの鉄道駅前に到着した。所要4時間と聞いていたけれど、出入国検査やドライブインで休憩を含め5時間くらいかかったように思う。
MAPS.MEによると、私の泊まるホテルまではここから地下鉄に乗る必要があるらしい。幸運なことに、駅構内には両替所があったので、手持ちの全てのジョージアラリをアルメニアドラムに交換する。正確には覚えていないけれど、そんなに悪いレートじゃなかった記憶がある。
アルメニアドラムを入手し、地下鉄のトークンを買う。こどものおもちゃの方がまだ立派に見えるちゃちなトークンだけれど、一応機能したのでチップくらいは埋め込んでいるのだろうか。運賃は全線均一で100ドラム(≒22円)。お安くてよろしい。
エレバンの地下鉄は、1981年旧ソ連の8番目の地下鉄として開業した。
今でこそ100万都市のエレバンだけれど、1981年、そして建設計画が議論された70年代の人口は今程多くはなく、当時のソ連の基準だった「人口100万以上の都市には地下鉄を、それ以下の都市には路面電車を」という基準に適合していなかった。
しかし当時のアルメニア共産党第1書紀であったデミルチャンが「21世紀エレバンの人口は200万に達するだろう」とブレジネフを説得したという話が残っている。ちなみにエレバンの人口が100万を超えたのは2006年だ。
やっと到着した今回最後の訪問地アルメニア。実はこの国はアゼルバイジャンだけはなく隣国のトルコとも関係が良くなく、国境を開いていない。陸路で行き来できるのはイランとジョージアだけ、というこの国に私はほんの数日滞在する。
ジョージアまで来たら、アルメニアまで来ておかないと、次のチャンスはいつになるか分からないし。