2019務安/木浦/珍島⑥ 木浦近代歴史館2館から木浦旧市街、そして三鶴島の金大中ノーベル平和賞記念館を見学した件
2022/10/03
かつて日本領事館だった木浦近代歴史館1館を出て、2館を目指す。この周辺は日本建築が多く残るエリアになる。
木浦近代歴史館2館は、1920年6月に建てられた東洋拓殖株式会社の木浦支店だ。
この会社は、主に朝鮮半島を中心とした拓殖事業や資金供給を目的とした当時の大日本帝国の特殊会社であり、朝鮮半島には釜山、大邱、木浦、金堤、大田、京城、元山、沙里院、平壌と9の支店があり、会社発足当初の本店はソウルにあった。近代歴史館としてオープンしたのは2006年であり、その歴史は1館より長い。
元領事館の1館に比べいかにも「会社」という感じの建物でその意味ではやや風情に欠けるし、更にはほとんどの展示が写真パネルなので、その意味でも見学の面白みは1館にはかなわない。ただ、1館と2館は2000ウォンの共通チケットで見学できるので、あわせて「近代歴史館」と考えれば良いのかな?
金庫室。こういう小部屋は映像とオブジェで展示演出されることが多いが、ここも例外ではない。
ちょっと興味深かったのが、階段の下に隠すように置かれた「商戦陸地綿発祥の地」の石碑だった。高温多湿の日本では綿の栽培は難しく、総統府だか役所だかが木浦での綿花栽培を強制した、のだそうだ。私はこの後、木浦の郊外を歩いていて偶然綿の花を見ることになる。
写真パネルを見てから,旧市街を歩く。歴史観周辺には一見して日本建築と分かる建物のも少なくないし、中にはカフェとして客にだけ内部を公開しているものもある。
日本建築以外の木浦の旧市街はと言うと、まさに「開発の波に乗り遅れた韓国の地方都市」と言う風情で、それが良い。おしゃれで今風の街より、歩いていて楽しいし。
木浦港。大型船や客船の姿はなく、漁船と作業船の姿しか見えない。フェリーや客船は湾内までは入らず、ここから1km程離れた湾入口にあるターミナルに発着する。湾内は水深もそんなにないのかもしれない。
木浦近代歴史館のある旧日本人街から港をまわり込むように30分程歩くと、湾の東側に小ぎれいに整備された公園エリアに出る。三鶴島(サムハクト)公園だ。ここにはヨットマリーナやカヌーキャンプ、そして2つの博物館がある。
2つの博物館の1つは「子ども海科学館」、そしてもう一つが「金大中ノーベル平和賞記念館」。もちろんここで見るべきなのは、後者だ。
韓国の元大統領である金大中は、「太陽政策」という緊張緩和政策によって南北の首脳会談を成功させ6.15共同宣言を締結し、そのことなどが評価されてノーベル平和賞を受賞した。韓国では唯一のノーベル賞受賞者でもある。小学校から高校までを木浦で過ごしたため、ここに記念館が建てられた。ありがたいことに、入場料は無料だ。
金大中ノーベル平和賞記念館を訪問した見学者がまず目にするのが、大統領時代に使用していた公用車だ。私は自動車にあまり興味がないのできちんと見なかったのだけれど、これは韓国製の自動車なのだろうか?やっぱり大統領たるもの、国産車に乗らなければまずいよな?
館内では金大中氏、そしてご夫妻の人形が訪問者を出迎えてくれる。
金大中氏は、大統領選挙で現職だった朴正煕大統領に97万票差にまで迫り、政敵とみなされるようになった。その後、交通事故を装った暗殺工作を受けたり、民主化運動に絡んで死刑判決を受けたり、更には日本のグランドパレスホテルからKCIAによって拉致されたりと、かなりの迫害を受ける。
拉致事件の際には日本の海上保安庁のヘリコプターが照明弾などで威嚇しなければ、工作船で殺害されるところだった、とまで言われている。まぁずいぶん大変な目にあった方なのだ。館内にはこの事件を取り上げた(多分)日本映画の一部も上映されている。
波瀾万丈と言って良い経緯を経て大統領に就任し、そしてノーベル賞を受賞したのだから、地元の人にとっては英雄なのだろう。基本的には極めて好意的な扱いと展示が続く。
が、韓国の大統領は退任後いろいろな批判を受けることが少なくない。家族の不正蓄財で批判を浴びたり、太陽政策を批判されたり、更には「ノーベル賞受賞のために組織的な工作を行った」などの話もあって、全ての人が今も手放しで評価しているわけでもない。ちなみに韓国大統領は刑事告訴されて死刑判決などを受けるなど、不遇な経緯を辿る人が少なくない。
「2011年12月、金大中政権が発足当時からノーベル平和賞受賞のために組織的な「工作」を行っていたことや、北朝鮮に5億ドルを不法送金した内幕、安全企画部による盗聴などをメディアに次々と暴露した元国家情報院職員がアメリカへの政治亡命が認められた。この元職員は機密漏洩の容疑で国家情報院より告発されている」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%A4%A7%E4%B8%AD
そして、例によって記念館には金大中氏をモチーフとした極めて微妙な土産物も売っている。
この種の土産物は、亀尾の朴大統領生家にも売っていた。正直「誰が買うのだろう」と思わないでもないけれど、考えようによっては「ここでしか手に入らないレアグッズ」でもある。
私は要らないけどね。