2019釜山/対馬/ソウル⑤ 悪夢のゲロ船だった未来高速の高速船NINAに乗って、7年ぶりに対馬の比田勝港に到着した件
2022/10/03
久々の釜山フェリーターミナルは、なんだかやたら広く小ぎれいになっていた。聞けば2015年8月からこの新ターミナルの運用が始まったとのこと。
そう言えば2012年にジェットフォイルで釜山から対馬/比田勝に行ったときには、龍頭山公園近くの人気宿エリーゼホテルから歩いてターミナルに行ったはずだけれど、今回はなぜか釜山駅から歩いている。場所も変わってるじゃん!だ。スマホで地図を使って移動をしていると、こんなことに気がつくにも時間がかかってしまうのだな。私だけだろうけれど。
以前のフェリーターミナルにはそんなに大きくはない食堂が一つか二つ、更に数軒雑貨屋や薬局があった程度だったけれど、今ではそこそこ小ぎれいなレストランもコンビニもある。もちろん薬局もあって「効果早い順する船酔い薬」を売っている。2012年には「つよいよいどめ」と表記されていたから、日本語的には退化、だな。
チェックインの方法は飛行機とそんなに変わらない。会社ごとに儲けられたカウンターに出向き、パスポートを見せればすぐに搭乗券が発行される。希望の座席がある場合にはここで伝えることになる。私たちは前方窓側の席をお願いしてみた。景色が良ければ多少は船酔いしても気が紛れるかな、との期待もあってだ。
この後の流れも空港で国際線の飛行機に乗るときとそう変わらない。預ける荷物のない旅客はただ普通に出国審査を済ませ、ゲートに向かう。
出国審査後にあるのが免税品店だ。かつて釜山から対馬への日帰り旅行が人気になり始めた頃、韓国人旅行者のお目当ての一つ、場合によっては主たる目的がこの免税店での買い物だったとも言われる。フェリーで釜山に入国する際には、US$400/1リットル以下の酒類1本とタバコ200本、そして香水2オンスまでが免税で持ち込めるのだけれど、これだけで「かなりのお得」なのだそうだ。
強い酒もタバコもやらない、更には香水の匂いが苦手な私からればお得どころかただの散財にしか思えないのだけれど、この辺の価値観は人それぞれだな。もしかしたら韓国ではまだ輸入ウイスキーの地位が高いのかもしれない。
出国エリアにも売店はある。さすがに出国前のセブンイレブンと比べるのは可哀想だけれど、それでもちょっとした飲み物などが手に入るのは便利だ。
ゲート前で乗船を待つ。この日だから、なのか、この時間帯だからなのか、出国審査などもとても空いていて、1時間少し前にターミナルに到着した私たちは多少時間を持て余した。ちなみに韓国にも5月の連休はあるけれど休日は5月5日(こどもの日)と5月6日(お釈迦様の誕生日/燃灯祝祭)のみで、これに土日がつながるかどうか、程度だ。4月30日はただの平日になる。
うんうん、チケットはお安いけれどちゃんとした船に見える。九州地方整備局港湾空港部の資料によると、ニーナの総トン数は553t、定員は440人。そして最高速度は34ノット(≒62km/h)なのだそうだ。資料にあるフェリーの平均最高速度が19-20ノット、ジェットフォイルの最高速度が40ノットであることを考えると、確かに速い。
こういう言い方は失礼かもしれないけれど、船内もちゃんとしている。
釜山から比田勝までの所要時間は90分。そんなに長い航海ではないけれど、一応カフェなんかもあったりする。コーヒーが3000ウォンと言うのはお高いんじゃないか、という気もしないではないけれど、ビールは1500ウォン。象のマークの発泡酒のFILITEではなく、一応「ビール」のハイト(hite)が1500ウォンなのはもちろん免税だからなのだけれど、コーヒーの半額なのは「免税だからビールは安くなくてはならない」という世間の思いもあるだろう。
船はフェリーターミナルを出発し、釜山港を出て、外海に出る。と同時にどんどん速度を上げていく。速い。しかし、ジェットフォイルに近い速度を出す高速船だけれど、ジェットフォイルではない。波を受けるたびに大変に揺れる。
この揺れはただ事ではない。函館にある北洋資料館の漁船シミュレータの揺れと同等か、もしかしたらそれ以上の揺れだ。90分続くスターツアーズのようだ。
苦しい。気持ち悪い。吐きそうだ。吐いた。
もともと乗り物酔いに強い方ではないけれど、実際に吐いてしまったのは何年ぶりだろう。吐きそうになったことはあってもここ10年以上、吐いたことはなかったと思う。
しかも今回は噂を聞きつけて、効きすぎて体にあまり良くないとまで言われる貼る酔い止め薬「キミテ」とドリンク剤「イビロン」の両方を飲んでおいたのにこのありさまだ。
酔ったのは私たちだけじゃない。乗組員以外の乗客はそのほとんどが苦しそうにしていたし、吐くためにトイレに行こうとしたらそこも行列、座席や通路で吐く人も少なくない。もしかしたらあの有名なゲロ船「フェリーよなくに」より嘔吐率は高いのではないか、とすら思う。帰りもこの船に乗らなければならないのかと思うと、未来が見えなくなる。
90分、正確には90分のうち約60分間の悪夢を乗り越え、対馬の比田勝港に到着する。乗客のほとんどは船が比田勝港に近づいて速度を落とした時点でなんとか生き返り、足下が揺れないことに感謝しながら陸地を歩く。
7年ぶりの比田勝フェリーターミナルは,釜山のフェリーターミナル同様立て替えられたようで、入国審査の列も増えていた。かつて狭い通路の先に一つか二つしかなかった入国審査のカウンターも、空いているかどうかは別として最大8レーンだったかそれ以上だったか、とにかく昔と大違いだ。ちなみに2012年はこんな感じで「日本人の方いらっしゃいますかー?」と叫んで呼ばれた物だった。
新しいターミナルは平成28年、2016年に供用を開始したのだそうで、入国審査のみならず待合ロビーや船舶会社のカウンターも広く立派になっていた。
新しくなった観光案内所で対馬の地図と観光パンフレットをいただき、ついでにレンタカー会社についていろいろ聞いてみる。
観光案内所のカウンター左端にはレンタカー会社直通電話があり、ここから無料で電話をかけることもできる。私は7年前に車を借りた店に電話を入れてみた。今回の対馬滞在時間は約7時間。徒歩で比田勝周辺を見ても限界はあるし、レンタサイクルもあまり行動範囲は広くならない。やはりここはレンタカーだ。厳原ならまだしも、比田勝発着の7時間、車なしで過ごすのは不可能だと言って良い。
NINA