2019釜山/対馬/ソウル⑥ 比田勝でレンタカーを借り対馬北部をドライブ観光していたら、駐車場で韓国人旅行者を乗せた観光バス関係者に不当な車の移動を強いられた件
2022/10/03
こういう言い方は申し訳ないかもしれないけれど、比田勝は小さな集落だ。
1907年にノルウェー式の捕鯨基地が出来て捕鯨の基地として、戦前に釜山港への連絡船寄港地として発展し、今でも対馬北部の重要な港なのだけれど、まぁ大きな町、じゃない。2018年、国土交通省のみなとオアシスなるものに登録しみなとオアシス対馬/比田勝として街作りをしているけれど、だからといって急速な盛り上がりを見せるわけでもない。
今対馬は島全体が「対馬市」という一つの市になっており、その人口は31559人(2017)、そして少し古い数字になるけれど2012年の比田勝の世帯数417、人口は950人なのだそうだ。この規模の集落の徒歩圏内に半日過ごす観光資源を求めるのは酷というものだ。
そこでここはレンタカーの登場、となる。1日4000円+保険料が1000円、計5000円也。
まずは飲み物、そして帰路の船用の酔い止めを買おうと、このエリアでは最大級の商業ゾーンであるバリュースタジアムへ。比田勝港からは約4.5km、「徒歩や自転車で行けない距離でない」とは言えるけれど、山をひとつ越える感じになるので、結構きついんじゃないかとも思う。
ここにはドラッグストアやそこそこ規模の大きなスーパー、ホームセンターに本屋、衣料品店もあったりする。そして、ここの駐車場には、パネル中心の対馬に関する展示があり、これがなかなか面白い。
取り上げられている話題には地元ならではの物が多いし、内容も興味深い。ショッピングセンターの駐車場に置かれるにはもったいないレベルだ。作った人の志の高さが伝わってくるじゃないか!
スーパーで買った飲み物を飲みながらパネル展示をじっくりと読む。なかなか良い対馬北部観光のスタートだ。酔い止めも手に入ったし。
次は鯛浦鰐浦の韓国展望所。対馬北部の旧上対馬町北部にあるこの場所から韓国までは約50km、天気が悪くなければ韓国が見えるし、夜には韓国の夜景が見えることもあるのだそうだ。まぁ今回は、というか今回も夜まで対馬にいることはできない。(鯛浦と書いたところTwitterで「鯛浦」とのご指摘をいただきました。ありがとうございます。Twitterすごい!使いこなせてないけれど)
国境の地を実感出来る場所でもあるけれど、韓国から往復2000円の船でやってきた身としては「やっぱり対馬と韓国は近いんだ」ということを再認識する場所であり、同時に「この程度の距離もあんなに船酔いするんだ」と海の厳しさを思い知らされる場所でもある。司馬遼太郎の「街道を行く」によると、昔は対馬から日帰りで船で映画を見に行ったりもしたのだそうだ。そんなの私は絶対嫌だ。
1703年、韓国/釜山を出発した108名の訳官使が悪天候で遭難し全員亡くなった海難事故があった。その事故を記録する碑なのだが、完成したのは平成3年とそんなに古くはない。
ちなみに「訳官使」は通信使ではない。その名の通り、高位の日本語通訳官を正使とする集団で、対馬には訳官使が祝賀使や弔慰使を兼ねて50回以上来島していたのだそうだ。慶応の名誉教授である田代和生さんの「近世の日朝関係」という論文にはこんな記述がある。
「訳官使が定例となったのは、「柳川事件」後、江戸から対馬へ帰島した宗義成を慰問するため派遣されたことに始まるが、将軍や対馬藩主の吉凶に対する祝賀使・弔慰使も訳官使が兼ねたことから、徳川時代を通じて50回以上来島している。訳官使は本来の目的以外に、倭館で処理できない重要事案、たとえば島の領有権問題や経済問題などを藩当局と直接協議するために派遣されており、事実上の外交交渉使を兼ねていた。通信使が祝賀の使節を目的とし、外交折衝や激しい議論を行わずに済んだのは、ひとえに対馬使節や訳官使の頻繁な往来があったからに他ならない」
(田代和生「近代の日朝関係」 より引用)
柳川事件というのは、対馬藩が国書を偽造したとされる柳川一件のことだろう。この辺の事情については厳原の長崎県立対馬歴史民俗資料館を訪問するのが良いのだけど、現在休館中で代替展示が対馬市交流センターでなされているらしい。展示より資料の保管に主眼を置くような地味な博物館だったから、これをきっかけに見応えがある博物館になればよいな。
そして今回、私はここ韓国展望所の駐車場で,大変不愉快な経験をした。
駐車場の規定の場所、普通の自動車を止めるスペースにレンタカーを止めたところ、見ず知らずの人間がやってきて「この車動かして」と言う。特に身分を証明するものをぶら下げている訳でなく、制服を着ている訳でもなく。施設のスタッフではなさそうだ。
「どうしてですか?」と伺ったところ、その答は大変不愉快なものだった。
「これからここにどんどんバス来るから。車が出せなくなってもいいなら別にいいけどね」 男は笑う。
要は、これから韓国人観光客を乗せた観光バスが複数台やってくるから、本来の小型車の駐車エリアであるスペースをバスに明け渡して、自家用車は別の場所に行けというのだ。明け渡さないとバスで車を閉じ込めるつもりなのか?
車の移動を要求した男は仲間らしい女性と話をしている。ネイティブな日本語を話していたが、日本人なのか韓国人なのかは分からない。韓国人観光客の乗るバス利益を得ていることは間違いなさそうだったけれど、日本のバス会社の人間なのか、あるいは韓国の旅行会社の人間なのか、その辺は謎だ。
ただ、その要求が不当でその態度が極めて非礼だったことは間違いない。
ここでトラブルを起こすつもりのなかったので,大人しく車を動かしたけれど、あまり愉快な気持ちではなかった。がらがらだった駐車場にはその後韓国人旅行者を乗せたバスが何台かやってきたから、そのことを知っていたんだろうな。駐車場にはバスのスペースもあるけれど、確かに台数分はない。普通自動車を追いださなければ、駐車スペースは不足している。なるほどね。
全ての地元の人たちが、必ずしも全ての韓国人観光客とその関係者を歓迎はしていない、という話は昔から聞いていたけれど、ここでその理由の一つを垣間見た気もした。車の移動くらい協力してやらないでもないけれど、少なくとも無礼ではないまともな口に聞き方くらい勉強した方が良いと思う。日本人だとうと、韓国人だろうと。
とりあえず初対面の人間には敬語を使え。