2019釜山/対馬/ソウル⑪ DMZトレインで都羅山駅に行き、南侵第3トンネルなど統制区域内の4ヶ所をツアーバスで巡った件
2022/10/03
京義線の統制区域内にある都羅山駅前には、域内ツアーを行うバスが数台止まっている。統制区域内にもバスが全くないわけではないのだけれど、訪問者の移動は制限されており、ここにやってきた人はこのバスに乗るしかない。今回参加したツアーは3台のバスでの開催だった。
ひとつ手前の臨津江駅前には臨津閣や自由の橋など見所もあるけれど、都羅山駅前には保税倉庫以外何も見るものはなく、ここまでやってきてツアーバスに乗らないという選択肢はない。ただ、別のバスツアーなどでやってきて、記念品や入場券を買う人もいる。都羅山駅自体が観光名所でもあるのだな。
DMZトレインで行く都羅山からのツアーバスの行き先は、ずっと変わらない。
都羅平和公園、都羅展望台、統一村、そして南侵第3トンネルの4ヶ所だ。これはバスの前面にあるサインボードにも(平和公園以外は)書いてある。メインの見学場所はやはり南侵第3トンネルと都羅展望台であり統一村は昼食場所なので、よほどの混雑でもない限り、ツアーはバスのサインボードにも行き先を書いてもらえない都羅平和公園から立ち寄ることになるらしい。
都羅平和公園。
ここは統制区域内にある、現代アート、鹿園、朝鮮戦争で使われた武器の展示、そしてDMZの自然案内を中心とする小さな資料館がある公園で、あまり特別なものはないけれど、都羅エリアでは貴重な観光施設だ。これがないと、都羅山の観光ツアーはやることが足りなくなってしまうんじゃないか、と、そんな気もする。
展示館には小さな3Dシアターもある。DMZは統制区域のため動物の楽園になっているのだそうだ。地雷あるじゃん、というつっこみはここではしないでおくけれど。
園内のパネル展示は、文大統領と金委員長の2ショット写真なそ、南北融和政策的な内容のものが増えていた。じっくり読むとそれなりに興味深い。
統一村食堂。
都羅平和公園を見学した後は、統一村でのランチになる。単品メニューもないではないのだけれど、ほぼ全ての人がセルフサービスのビュッフェを選んでいる。1人前7000ウォンだったか8000ウォンだったか、そんなに高いとは言わないけれど、内容から安いとも言いにくい。まぁ、こんなもんだ、な。
おかわり自由ということになっているのだけれど、客が途切れるとすぐに料理を撤去してしまうため、食べたい分量を一度に取ってしまう方が良い。ツアー客の中にはお弁当を持ち込んで、食堂の外で食べている人たちもいた。その方が安上がりでおいしいかもしれないね。
統一村はDMZに唯一ある民間人の住む村で、村民は停戦ラインから近い(北のプロパガンダ村から1kmの距離!)というリスクがあり、北からの侵入を警戒するため夜間の外出が禁止されたり、やたら点呼を受けたりということもあるのだそうだ。
しかしそのかわり村民は納税と兵役の義務は免除される。だったらそれなりに定住希望者はいそうなものなのだけれど、この村への移住は、朴政権時代の1970年代、もともとこの土地に住んでいたなどの87世帯に認められたものであり、希望すれば住める、という訳ではないらしい。
食堂の隣には地元の農産品などを売る売店もあるが、あまり客でにぎわってはいない。
外には今風なカフェだかなんだかもあるぞ。私はいつも「こんな高いコーヒーを誰が買うんだろう」と素通りしてしまうのだけれど、こっちには多少の客がいる。
昼食を終えると、メインイベントの時間だ。
都羅展望台。
バスは旧展望台前の駐車場に停まるけれど、展望台は閉鎖されており、見学者は坂道を5分程登り、新しい展望台へ向かう。
新装なった都羅展望台は、屋上のある立派な2階だてのもので、室内外から北を望むことができる。
この日は天気が良く、今までで一番北側が見えた。間近な板門店や北のプロバガンダ村だけではなく、国旗掲揚塔や金主席像、開城の工業団地までがとてもよく見える。
北の生活が見たいとか、実際に農作業などをしている人が見たいとかそんな場合には、丹東の黄金秤や一歩跨などの中朝国境の方が良いけれど、分断されたDMZから北を見るのも興味深い経験だと思う。
そして最後は南侵第3トンネル。
トンネル内部は撮影禁止なので写真はないのだけれど、ネットに動画があったので貼っておく。まぁ、こんな感じの場所だ。
北が韓国に侵入するために掘ったとされるトンネルは南侵トンネルと呼ばれ、現在までに4つが発見されている。1974年、最初に発見された軌道の敷かれた第1トンネルは高浪浦近郊に、第2トンネルは鉄原に、第4トンネルは揚浦に、そしてここ都羅山近くの坡州に第3トンネルがある。もちろん北は掘ったことを認めていない。
約70mの深さに1.6kmjほどの長さを持つ第3トンネルは、第1、第2トンネルよりずっとソウルに近いこともあり、その危険度は大きかったと言われる。トンネルが発見されたのが1978年、10年前には韓国の大統領府である青瓦台が襲撃される事件も起きているし、2年前には板門店のポプラ事件も起きている。いや、対南工作と言われる侵攻事件は1953年の休戦後も頻繁に起きているのだ。それは神経質になるわ、である。
また、トンネル入口前には、大型シアターや資料館もあり、あんまりのんびりトンネルで過ごしているとそちらを見学する時間がなくなってしまうので気をつけたい。
以上4ヶ所の位置関係はと言うと、こんな感じだ。平和公園は都羅山からとても近いのだな。
この後バスは都羅山駅に戻り、多少の待ち時間で連絡するDMZトレインで、ソウルまで90分の移動となる。
このツアー、日本語は全く通じない。私の韓国語が現地の1歳児にも劣るレベルなので、ここは各ポイントで時計を指差して「ここは何時に出発ですか?」など、運転手さんや他の旅行者に尋ねまくることになった。
ただ、今回のツアーではバス車内のDVDに英語の解説もあったので「潔いほど何も分からない状態」からは脱却出来ていた。DVDは昔もあった気がするので、英語音声を再生してくれるかどうかはもしかしたら運転手さんの気持ち1つなのかもしれない。もしかしたら日本語もあるのかな、と,今では思わないでもない。
DMZトレインのツアーにかかった費用は、往復の列車代が往復約18000ウォン(≒1672円)、ツアーのバス代が9200ウォン(≒854円)、合計しても2500円程度、ソウルからの日本語バスツアーだと安くても5-6万ウォン、日本円で5000円程度はかかるので、かなり割安になる。往復3時間のDMZトレインの列車旅も、まぁ、悪くない。