2017スリランカ11 シーギリアの頂上で愚かな王の暮らしに思いを馳せたていたら、帰りのバスに乗り遅れた件
2017/10/04
「ライオンの足のテラス」で少し休憩をしてから、シーギリアの頂上を目指す。
ここから先は頂上まで見学するべき場所や広い休憩ポイントはない。自分のペースで階段を登り、休み、そしてまた登る。疲れたら、後ろに広がるライオンの足の広場を見下ろすのも悪くない。絶景じゃないか。
ライオンの足の広場の向こう側に見える山には、僧院が見える。シーギリアから移されたものもあるらしい。山に僧院を作るのはダンブッラの石窟寺院と同じ発想だな。
ライオンの足の広場から階段を登ること20分、ついにシーギリアロックの頂上、王宮の遺跡に到着する。
今から1540年前の紀元477年、権力志向の強いちょっと危険な王カッサバ1世が、父を殺し弟を追放し、その報復を恐れてこんな場所に王宮を作った。父を拘束したカッサバ1世は財宝を要求したが、父は貯水池を指し示したため怒りのあまり殺害した、という話もある。
でも自分も貯水池作ってるのな。
カッサバ1世の玉座は東を向いている。朝陽が好きな王だったのだろうか。
玉座跡に座ることは禁止のようなので、一段下から下界を眺める。
私も高いところは大好きだけれど、暮らしていくにはかなり不便なこんな場所に引きこもる王の暮らしは、どんなものだったのだろう。それなりに広さもあるし使用人も多いし、王であるのだから不便は少ないのかもしれないけれど、それでも報復を恐れ要塞に身を隠す暮らしは、それほど幸福じゃなかったようにも思う。
悲しい王の見た光景を十分に堪能し、岩を降りる。
もう少ししたら日が暮れる。その前にバス停に戻らなきゃ、だ。
えっと、バス来ないんですけど。
バス停で30分程待った私は不安になり、少し先のホテルが集まったエリアまで歩く。途中エンジン音が聞こえるたびに振り返るのだけれど、バスは来ない。店やホテルの人にバスについて尋ねてみる。
「最後のバスは5時、もうバスはないよ。」
よおし、久々にやってやったぜぃ!
不幸中の幸いその①として、ここは治安の悪いエリアではない。普通に人が暮らしている内戦も終わったスリランカの村だ。更に不幸中の幸いその②として、バスは通らないけれどスリーウィラーは時折走っている。宿に戻る手段はないでもない。問題はその価格だ。
私は半泣きで、周囲の商店やホテルでここからダンブッラまでの相場を確認する。数人の話をまとめると、相場は1200Rsから1500Rsらしい。もちろん普通のスリランカ人が20km移動するのにそんな大金を払うとは思えないので、半分外国人相場、半分夜間相場と言ったところだろう。
何台かのスリーウィラーに値段を聞き、一番安くて印象の良かった運転手にダンブッラまで走ってもらう。1500Rsというところ「1200Rsで行ってよ」と言ったら意外とあっさり「いいよ」と答えてくれた運転手だ。
ダンブッラまで20km、私はこんなに長距離をリクシャーに乗ったことはない。1200Rs(≒866円)なんて大金をこんな乗り物に支払ったこともない。全てが生まれて初めて、だ。
走ること約30分、スリーウィラーはダンブッラの新市街に到着した。話してみると運転手は結構人の良い人物で、私の不運を一緒に嘆いてくれた。「こんどから帰りは少し早めに戻った方がいいよ」。ありがとう、そうだよなぁ。
私はその足でスーパーの2階に行き、スリランカで初めてのビールを買い込んだ。
アンカー大瓶400Rs(≒288円)。日本でだって1缶84円の第3のビールばかり飲んでいる私にとって、このビールは極めて高価だ。しかし今の私にはアルコールと高価な買い物で、金銭感覚を麻痺させる必要がある。1200RSのスリーウィラー代は、それほど悔しかったのだ。
でも、このビール、めちゃまずかった。