SUZUKI GN125

GN125・原付2種東北耐久ツーリング 1日700q走行が何じゃ!

15、日本初の高規格低価格ゲストハウス、山形市「ミンタロハット」

おいしい蕎麦をお腹いっぱい食べ、私は幸福だった。

幸せな気分でバイクを南に走らせると程なく日が暮れてきた。こういう場合私は「都市の駅前」に向かう習性がある。未だに「駅前に行けばなんとかなる」と思ってしまう。高度成長時代にキャラクター形成をしてしまった後遺症なのだ。気がついたら山形市の駅前で途方にくれていた。

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とりあえず今夜の宿を確保したい。
が、正直今日日駅前にはあまり期待してはいけない。
今は駅前より少し離れたバイパス添いの方が賑わっているご時世だし、宿に至っては駅前に穴場はない。なんだかんだで鉄道利用者が多いこの国、駅前のホテルは安くはないのだ。

こと宿泊に関してだけは、「駅や観光ポイントから遠いほど安い」という原則は、未だ崩れていない。ホテルはそこそこ見あたるが、私好みの「あんまりお金の収集に熱心ではない宿」が見あたらないのだ。虫が光に吸い寄せられるように駅前に吸い寄せられた私は、途方に暮れた。途方に暮れるのは日課だ。


もっとも私とて高度成長時代そのままのキャラではない。
指きたす」という、言葉の意味が良く分からない時代に生きているため、多少の知恵もつけている。そこで持ってる知恵を総動員し、PHSで楽天トラベルやらベストリザーブやらで、比較的日銭に淡泊な宿を探してみた。当日予約だとますます淡泊に鳴る傾向があることも、私は知っている。私はゆびきたすなのだ。意味は良く知らない。


すると、八戸で3150円のサンルートホテルを紹介してくれた楽天トラベルが、「1泊3500円」という魅力的な数字を提示してくれた。ただしホテルではなくゲストハウスとある。名前はミンタロハットというらしい。ゆびきたす以上に意味が分からない。


ともあれこの界隈で最も安く泊まることができるのがここらしい。
もう迷っている余裕もないので、予約を入れて宿を訪ねる。

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ただの家だ。


が、ただの家とは若干違うことに、入り口に看板が出ている。どうやらここがゲストハウス・ミンタロハットらしい。

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「安いとは言え、なんだか偉いところに来てしまったなぁ」と思いつつベルを押す。これは多分Free宿とかとほ宿の亜種なのだろう。迎え入れられたダイニングで、オーナーさんのお子さんが夏休みの宿題でもやっていそうだ。まぁ私はインド・バラナシのゲストハウスで、オーナーのお子さんに宿題を教えたという過去もある。いざとなれば夏のテキストくらい数時間で終わらせてあげようじゃないか。


「いらっしゃい。お待ちしてました」
ご主人はおらず留守番の方が迎えてくれる。

「バイクじゃ疲れたでしょう。まぁ上がって休んで下さい」

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宿題をやっているオーナーのお子さんがいない。
というか、ずいぶん小綺麗な部屋なんですが?うかつなペンションのリビングよりよほど小綺麗だし落ち着くぞ?


荷物を置きたいので部屋の鍵を頂く。

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相部屋でない。

どころか、ツインのシングルユースだ。部屋には個別のエアコンやドライヤー、目覚まし時計、CSが見られる液晶テレビまである。Free宿やとほ宿とは何かが違う。というより雲泥の差だ。布団は羽毛、マットはスプリングを使わないタイプ。おかしなビジネスホテルよりよほど快適だ。

「あ、あのベッドが二つあるんですけれど…」

「はい、うちは四部屋しかないので、全部ツインかダブルなんです」


おおおおお!! これで1泊3500円でいいのか?


「お二人ならお一人3000円なんですけれど申し訳ないですね」

い、いや。申し訳ないのはこちらの方なのであって、決してあなたが言うべき台詞ではないと思うのですが…


「良かったらお風呂どうぞ。ユニットですけれど(笑)。2個所ありますから空いてる方でどうぞ。作務衣もありますから着替えてくつろがれると良いですよ」 
2個所ってこの宿4部屋しなないではないか。

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洗面所もお風呂も24時間自由に使える。
ゲストハウスなのに、歯ブラシやひげそりから入浴剤まで丁寧に並べてある。こ、これ使っていいんだよね…?

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お風呂で汗を流して用意していただいた作務衣に着替える。
いやぁ、良い宿だ。ビールが飲みたい。


「すいません、近くにコンビニありましたよね?あそこビール置いてましたっけ?」

「あ、発泡酒で良ければ冷蔵庫に入ってますよ。1本100円なのでそこの箱に入れておいて下さい」



なんですとぉ!!!

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リビングダイニングには大きな冷蔵庫とラックがあり、ここに置いてるビール、アイスクリーム、おつまみ、カップ麺、レトルト食品などなど、宿泊者は全て100円で頂くことができる。原価割れではないか。ちなみにコーヒーや紅茶、冷蔵庫のジュースや各種食材は無料だ。


コップをお借りし箱に100円玉を1枚入れビールをいただく。
旨い。お手伝いの方が「たしかもぎたてのキュウリがあったはず」と冷蔵庫を開け味噌と一緒に出してくれる。旨い。


玄関側に洗濯機がある。
この宿のことだ。どうせ無料で使えるに決まってると伺うと、想像通り宿泊者は自由に使って構わないとのこと。やっぱりなぁ。
ただし他の客の迷惑にならないように、使用時間は制限させている。あわてて汚れ物を洗う。

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ここ、すんげーいい宿なんじゃないのか?

30分後、はやりここに初めて泊まるという出張の方が隣のテーブルに座り、私のビールの出所を尋ねる。私はちょっと得意げにこの宿のシステムを説明する。出張の方もかなり感動し飲酒活動を開始する。当然10分後には雑談モードだ。

あ、これってゲストハウスに良くある光景…。

なるほど、ここミンタロハットはゲストハウスだ。
ただし観光地に良くある大規模ゲストハウスではなく、かなり小振りの、そして高規格のゲストハウスだ。というかこんな高規格のゲストハウス、日本では見たことがない。


出張の方と話が弾む。

「ビジネスホテルだと、部屋にいても退屈だし、その辺の居酒屋に行って飲んじゃうんですよ。でも話し相手がいるわけでもなし、新聞読みながらだらだら過ごして早寝しちゃうんですけどね。」

大変に良く分かる。私も八戸で全く同様に過ごした。
それはそれで悪いとは思わないが、旅行者同士で情報交換や雑談ができることはゲストハウスの最大の魅力だ。私たちは山形情報を交換しつつ、仕事の話や家庭の愚痴をこぼしあい、大変に盛り上がった。もちろん100円のビールをどんどん空けて、だ。


夜遅くオーナーさんが帰宅した。
オーナーさんはピアノの講師をやっている旅行好きの方だ。どうやら家の新築に伴い、どうせなら的にゲストハウスを作ってしまったようだ。痒いところに手が届くサービスは、ご自身が度々旅行をしていたからこそだったのだ。「将来ゲストハウスを開きたい」という旅行者は少なくないが、ここミンタロハットのご主人は、早々とその夢を叶えていたのだ。

この夜、私と出張の方、そしてご主人で1時頃まで飲んだ。
旅行の話、仕事の話、ゲストハウスの話、etc。これぞゲストハウスの醍醐味だ。楽しい。大変に楽しい。

他にも宿泊客はいたが、その方は部屋で休んでいるようだった。
別にリビングでの雑談は強制されるものではない。休みたい人は休めばいいし、飲みたい人は飲めばよい。部屋はおかしなホテルなどよりよほど快適なので、安眠できるだろう。良い宿だ。



朝、冷蔵庫の食材で朝食を作ってみた。
キチネットではない、しっかりしたキッチンや調理器具、食器も自由に使える。

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いくら自炊とは言え、これで無料は申し訳ないと思う。


私は結構旅行をしている。宿泊数も多分平均的日本人の数倍以上だろう。しかし、こんな素晴らしい宿に出会ったのは初めてだ。これだけの内容で平日だろうが宿前日だろうが3000-3500円でやっていけるのか、正直心配になる。

本当はここは私の山形の隠し宿にしたくないでもなかった。
しかしそんな度量の小さいことを言っていたのではオーナーさんに顔向けができない。それにお客さんが一定量来てくれないとこの宿の経営は難しいと思う。なにしろこの内容でこの価格、低い宿泊率ではあっという間に赤字になってしまいそうだ。


山形で宿泊するならミンタロハット。
絶対に後悔はさせません。保証します!



ゲストハウス ミンタロハット
〒980-0046 山形市大手町5−13
Tel: 090-2797-1687(佐藤)
Fax: 023-641-5918
eMail: satopia@ma.catvy.ne.jp



あんまり感動したので出しゃばって勝手にサイトまで作っちゃいました。^^;

http://www.japantg.com/mintaro/

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