船は函館についた。
私は無考えに勢いだけで北海道に上陸してしまう。こういうことだから、七転八倒の人生を送ってしまうのだ。
このまま北上するという選択肢もないではない。
しかしその場合、私は「いきあたりばっかりで無考えなまぬけ」から「準禁治産者」に格上げされる可能性もある。休みは1週間、永遠に続くわけではないのだ。
といってこのまま船で青森に引き返すのもまた愚かなので、函館に1泊することにした。フェリーターミナルでPHSのブラウザを起動し安い宿を検索する。と、函館にはライダーハウスが3軒もあるらしい。
私はライダーハウスに泊まったことがなかった。
雑魚寝はともかく寝具のない宿も少なくないと聞く。また噂によるとこの種の宿には主と呼ばれる長期滞在者がたまにいて、たいそう偉そうにしているらしい。
この種の主は、海外の安宿にも結構いる。大抵がコンプレックスの塊で、その裏返しとして自分の得意分野だけで偉そうにしている困ったちゃんだ。私はこの種の主よりよほどたくさん旅行をしているので、話し始めて少しすると大抵の主は偉そうにしなくなるのだが、残念なことにツーリングでは私は超初心者だ。ここぞとばかりに説教でもされたら鬱陶しいことこの上ない。
そこで函館の3軒のライダーハウスの中で、一番ライダー色の薄そうな宿を選んでみた。「鉄ちゃん/ライダーハウス ゴン吉の宿」というところだ。
鉄道マニアが自らを「鉄ちゃん」と呼ぶかどうか多少疑問も残るが、少なくともライダー専用ではないだけ客層も広いはずだ。それにこの宿には布団がある。寝袋もマットも持っていない私には好都合だ。
ゴン吉の宿は、函館の鉄道グッズ専門店が経営していた。
客はまず、「からまつトレイン」という店でチェックインする。
なんだか濃い。
しかし店の女性は大変に親切で対応が良かった。 ライダーハウスというところは、怖い親父にじろりと睨まれながら「泊まるのか?」と聞かれるような先入観のあった私にはちょっとした衝撃だった。 「今は暑いですから窓を開けましょうね」など、とても親切に宿の設備を案内してくれる。 |
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宿はガレージの2階だが、良く掃除されていて気持ちがよい。 また、寝具もたくさんありきれいに選択されたシーツや枕カバーがラックに置いてある。 |
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「今日は客が少ないから」ということで、リビングエリアに布団を敷いて寝てよいとのこと。リビングにはテレビやビデオもある。また、最近の旅行者のマストアイテムである携帯やデジカメの充電コーナーもある。至れり尽くせりだ。 |
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お風呂はないが、1階に手作りの温水シャワー室があり、200円で洗濯機や乾燥機も使える。また、ガレージが室内なのでバイクをいたずらされる恐れもない。 |
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こんな張り紙もあった。 壊れかかったデジカメと腕のわるい私の撮影で読みにくいがこう書いてる。 |
なんだかとてもいい。
このゴン吉の宿、函館駅から徒歩10〜15分ほどだろうか。夜繁華街に飲みにいくもの簡単だ。このロケーションと内容で1泊1500円はありがたい。
この日の客は私を含めて二人。相方は主とはほど遠い性格の良い先輩ライダーさんで、北海道のライダーハウス事情をいろいろ教えてくれた。
ライダーハウス、使い様によってはかなり楽しそうだ。
鉄ちゃん/ライダーハウス、ゴン吉の宿
函館市大手町2-17(鉄道用品、カラマツトレインからすぐ)
(函館駅を市電の走る通りに沿って函館山方向)
0138-22-4177(チェックインは17:30まで)