実は山形に入る前、玉川温泉からわざわざ横手に寄り道をした。
「日本3大焼きそば」の一つである横手焼きそばを食べるためだ。
「日本3大焼きそば」は、静岡県の富士宮焼きそば、群馬県の太田焼きそば、そして秋田県の横手焼きそばということになっている。しかしこの「日本/世界3大なんたら」は多くの場合大変怪しい。三番目の該当物件が自分と有名な二つをくっつけてでっち上げている場合が少なくないように思うのだ。例えば「世界3大スープ」の話は日本のタイ料理店がでっち上げたらしい。もちろんトムヤムが三番目だ。
私はあまり頭が良くないので、3大焼きそばを全て食べた。
富士宮の焼きそばは確かに旨かった。旨かったというより「興味深かった」という方がより正確かもしれないが、他の地域では食べられない麺とソース、そして調理スタイルが長年に渡り確立されているのだ。富士宮で焼きそばを食べることは間違いではない。
しかし太田の焼きそばは正直残念だった。
もしかしたら行くべき店を間違ったのかもしれない。あるいはたまたまその時だけ残念だったのかもしれない。しかし私の食べた焼きそばに関してだけは心から残念だった。
横手の焼きそばも以前食べた。
ここの焼きそばは半熟の目玉焼きを載せて食べるのが流儀ということになっている。前回はその教えを忠実に守ったところ、おいしいんだか残念なんだか分からなかったので、そのリベンジをしたのだ。半熟の目玉焼きなしで食べれば、焼きそばそのものの味も分かるはず。事前調査もゆびきたすして、結構遠回りして超有名店に行ってみた。
残念。
不味いというわけではないのだ。普通の焼きそばだ。
しかし「日本3大焼きそば」というには、あまりにも普通すぎる。普通のソース焼きそばだ、これ。
それにおいしいか不味いかは、かなりの度合いで主観の問題だ。
それは各人の生活環境や生育歴、嗜好や体質などで大きく異なる。
例えばイヌイットの皆さんにとっては新鮮なアザラシの生肉はかなりおいしいようだが、私は生の脂肪は苦手だしその善し悪しを見分ける舌も持っていない。料理が好みに合う国でも、タイのメンダー(タガメ)も韓国のポンデギ(蚕)も苦手だ。しかしだからといってこれらの食べ物を「まずい」とは言いたくない。私が苦手なだけなのだ。
とはいえ「おいしい/まずい」がないのかと言えば、これは確実にある。比較的近い文化の中で、ある程度の一般化をすれば区分けは可能ではあるのだ。だからこそおいしいものに巡り会えればうれしいしそうでもないと残念な気持ちになる。
だが「おいしい/まずい」根拠は結構怪しい。
そういう訳で、国内で口に合わない物を食べても私は「まずい」とは出来るだけ言いたくない。それ以前に、出来れば何でもおいしく食べたいと思っている。なんでもおいしく食べることができるということは、受容の幅が広いということなのだと思う。食い物にケチをつけてばかりいる連中は、舌が(主観を元に)よほど「肥えている」か受容の幅が狭いかのどちらかだ。
今回残念だったのは、ただ私の受容の幅/理解の能力が低かったためかもしれない。それにしても…
残念。
このページは、2007年、SUZUKI GN125で首都圏から1週間の東北一周ツーリングに出かけた時の記録です。
GN125・原付2種東北耐久ツーリング 1日700q走行が何じゃ!
16、横手焼きそばは「日本3大やきそば」の一つ、なのだそうだ…